生産管理読了時間 11 分
シリアル単位のトレーサビリティは、問題が起きた日に効く
トレーサビリティの価値は平時にはありません。問題が起きた日に、回収が 300 個で済むか 3 万個になるかを分けます。
01ロット番号かシリアル番号か
| ロット単位 | 個体シリアル単位 | |
|---|---|---|
| 粒度 | 1 ロット(数百〜数千個) | 1 個ごと |
| コスト | 低い | 高い(表示、読取り、データ量) |
| 回収範囲 | ロット全体 | 個体単位まで特定できる |
| 向く対象 | 締結部品、素材、消耗品 | 自動車の安全部品、医療機器、航空宇宙 |
| データ量 | 小さい | 大きい。データベース設計が要る |
02バーコードの種類
| 種類 | 次元 | 容量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Code 128 | 1 次元 | 約 48 文字 | 汎用的で密度が高い |
| Code 39 | 1 次元 | 低め | 旧来のシステム。自己チェック機能あり |
| EAN / UPC | 1 次元 | 固定 | 小売商品 |
| QR Code | 2 次元 | 数千文字 | 誤り訂正が強く、スマートフォンでも読める |
| DataMatrix | 2 次元 | 数千文字 | 極小サイズでも読める。工業表示の第一選択 |
| PDF417 | 積層型 | 中 | 証票、物流ラベル |
03ダイレクトマーキングの品質
金属に刻んだコードと、ラベルに印刷したコードでは評価基準が違います。ISO/IEC 29158 は DPM の品質グレードを規定する専用の規格です。
| 指標 | 見るところ |
|---|---|
| Cell Contrast | セルと背景のコントラストが十分か |
| Cell Modulation | 各セルの明るさが揃っているか |
| Fixed Pattern Damage | ファインダパターン(L 字とクロックトラック)が欠けていないか |
| Axial Non-uniformity | コードの縦横比が歪んでいないか |
| Grid Non-uniformity | 格子位置がずれていないか |
| Unused Error Correction | 誤り訂正の余裕がどれだけ残っているか |
表示方法がグレードを左右します。レーザアニールは材料を削らず酸化変色でコントラストを作るので、ステンレスや防食が必要な面に向きます。ドットピンは安価ですがコントラストが弱い。レーザ彫刻はコントラストが最も良い一方で表面を壊し、刻痕が疲労の起点になり得ます。だから図面で打刻位置を制限することが多いのです。
04採番の決め方
- シリアルに意味を詰め込まない。品番・日付・工場コードを埋め込むのは一見便利ですが、規則を変えた瞬間に過去の番号が読めなくなり、桁数も膨らみます。
- シリアルは鍵に徹する。ほかの情報はデータベースに置きます。項目を増やしても、すでに表示済みの部品に影響しません。
- 誤りを防ぐ設計にする。チェックディジット(Mod 43 など)を足せば手入力ミスを弾けます。
- 業界の標準に従う。自動車は VDA 4902 や AIAG B-4 のラベル書式、医療機器は UDI、航空宇宙は ATA Spec 2000 が一般的です。
05データがつながっていること
完全な追跡経路は素材ロット → 製造指図 → 工程実績 → 検査結果 → 完成品シリアル → 出荷先です。どこか一段でも紙や表計算で手作業なら、回収のときに人が突き合わせることになり、その時間の代償は回収そのものより大きくなりがちです。
| 段階 | データの出どころ | よく切れるところ |
|---|---|---|
| 素材 | 受入検査、ミルシート | ミルシートが紙にしかない |
| 製造指図 | ERP | — |
| 工程 | 現場の実績報告 | 口頭の引継ぎ、後追い入力 |
| 検査 | 検査表 | チェックだけで測定値を残していない |
| 出荷 | 納品書 | シリアルとひもづいていない |