図面判読読了時間 12 分
H7 と h6 の組み合わせは、ゆるいのか、きついのか
Ø20 H7 という 5 文字には 3 つの情報が入っています。基準寸法、公差域の位置、公差域の幅です。これが読めれば、毎回表を引かなくて済みます。
01公差記号の 2 つの部分
ISO 286 の公差記号は、文字 1 つと数字 1 つでできています。文字が基準寸法に対する公差域の位置を、数字(IT 等級)が公差域の幅を決めます。
- 大文字は穴(内側寸法)、小文字は軸(外側寸法)に使います。
- 文字は A から Z まで。A〜G は穴が大きめ(すきま側)、H は下の許容差がちょうど 0、J〜ZC は穴が小さめ(しめしろ側)です。軸は逆で、a〜g が小さめ、h は上の許容差が 0、j〜zc が大きめになります。
- IT 等級は IT01 から IT18 まであり、数字が小さいほど公差は厳しくなります。同じ IT 等級でも基準寸法が違えば実際の値は変わります。寸法が大きいほど公差は広くなります。
| IT 等級 | Ø20 での公差値 | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| IT5 | 9 μm | ゲージ、精密軸受のはめあい |
| IT6 | 13 μm | 精密はめあい、歯車軸 |
| IT7 | 21 μm | 一般的なはめあい面(最も多い) |
| IT8 | 33 μm | やや緩いはめあい |
| IT9 | 52 μm | はめあい面以外、キー溝 |
| IT11 | 130 μm | プレス品、鋳物の加工面 |
023 種類のはめあい
穴と軸の公差域を重ねると、はめあいの性格が決まります。
| 性格 | 定義 | よくある組み合わせ(穴基準) | 用途 |
|---|---|---|---|
| すきまばめ | 常に穴が軸より大きい | H7/g6、H7/f7、H8/e8 | すべり軸受、ガイドポスト |
| 中間ばめ | すきまになることも、しめしろになることもある | H7/k6、H7/m6、H7/js6 | 位置を出しつつ分解も必要なとき |
| しまりばめ | 常に軸が穴より大きい | H7/p6、H7/r6、H7/s6 | 軸受外輪、ブッシュの圧入 |
しまりばめで考えること
- 圧入力はしめしろに割合します。大きすぎれば薄肉部品は割れます。
- 焼きばめ/冷やしばめ。外側を温める、あるいは軸を冷やすと組付力は大きく下がりますが、温度差が材料特性に影響しないか確認が必要です。
- 表面粗さは圧入で潰れるため、実際のしめしろは図面寸法より小さくなります。しまりばめ面に低い Ra を別途要求するのはこのためです。
03普通公差:何も書かれていない寸法
すべての寸法に公差を書くことはできません。書かれていない寸法には普通公差が適用され、表題欄付近の一文で指定されます。たとえば「公差指示なきものは ISO 2768-mK による」。
| 等級 | 記号 | 6〜30 mm の長さ公差 | 問うこと |
|---|---|---|---|
| 精級 | f (fine) | ±0.1 mm | 精密機械 |
| 中級 | m (medium) | ±0.2 mm | いちばん多い |
| 粗級 | c (coarse) | ±0.5 mm | 一般的な構造部品 |
| 極粗級 | v (very coarse) | ±1.0 mm | 鋳物、ガス切断 |
記号のあとの 2 文字目(H・K・L)は幾何公差の普通公差を指します。個別指示のない真直度・平面度・直角度・対称度にも既定値があるのです。つまり「ISO 2768-mK」は 2 種類の既定を同時に指定しています。
04よくある 3 つの誤解
- 「H7 とは ±0.01 のこと」。違います。H7 は下の許容差が常に 0 で、公差はすべてプラス側にあります。しかも値は基準寸法で変わります。
- 「公差は厳しいほど安全」。精度の要らない寸法に IT6 を書けば、機能は変わらずコストだけ上がります。公差は組付の要求から逆算すべきものです。
- 「普通公差は重要でない」。図面の 8 割の寸法がそれに依存します。2768-m を 2768-f に変えれば、図面全体の加工難度が変わります。