測定の基礎読了時間 13 分
分解能 0.001 の測定器でも、0.001 が測れるとは限らない
「この公差は ±0.01 だけど、うちのノギスで足りる?」答えはたいてい足りません。しかし本当の理由は分解能ではありません。
Wikimedia Commons・Example of a Cylindrical Coordinate Measuring Machine・CC BY-SA 4.001混同されやすい 4 つの言葉
| 用語 | 定義 | 平たく言うと |
|---|---|---|
| 分解能 | 表示できる最小の刻み | 画面が 1 目盛動くといくつか |
| 正確さ | 測定値が真値にどれだけ近いか | 系統的にずれていないか |
| 精密さ/繰返し性 | 同条件で繰り返したときのばらつき | 10 回測って揃うか |
| 不確かさ | 信頼できる区間を数値で表したもの | この数字はどこまで信じられるか |
分解能 0.01 mm のデジタルノギスでも、測定力・アッベ誤差・温度・作業者の感覚まで含めれば、測定の不確かさは 0.03 mm を超えることがあります。これらの誤差要因は画面には表示されません。
アッベの原理
アッベの原理は「測定軸は測定対象の長さと同一直線上にあるべき」と言います。ノギスはこれに反しています。目盛は下にあり、測定ジョウは長く突き出しているので、ジョウがわずかに傾くだけで誤差が拡大されます。原理に従うマイクロメータが、同じ分解能のノギスよりはるかに正確なのはこのためです。
02GR&R:測定システム自体のばらつき
GR&R(測定の繰返し性と再現性)は、測定のばらつきを 2 つに分けます。繰返し性は同じ人が同じ測定器で同じ部品を測ったときのばらつき、再現性は測定者が違うときの差です。
| %GR&R | 判定 | 処置 |
|---|---|---|
| < 10% | 許容できる | 工程管理に使える |
| 10% ~ 30% | 条件付き合格 | 用途の重要度と改善コストで判断 |
| > 30% | 不合格 | 測定システムの改善が必要 |
03よく使う測定器の適用範囲
| 測定器 | 代表的な分解能 | 代表的な不確かさ | 向く対象 |
|---|---|---|---|
| ノギス | 0.02 / 0.01 mm | ±0.03 mm | 現場での素早い確認、粗い公差 |
| 外側マイクロメータ | 0.001 mm | ±0.004 mm | 外径、板厚、IT7 以上 |
| てこ式ダイヤルゲージ | 0.001 mm | ±0.003 mm(比較測定) | 振れ、平行度、芯出し |
| ブロックゲージ(0 級) | — | ±0.1 μm 級 | 校正の基準 |
| 投影機/画像測定機 | 0.001 mm | ±0.002 mm | 2 次元輪郭、多数の寸法を一度に |
| 三次元測定機 CMM | 0.0001 mm | MPE は機種による | 3 次元形体、幾何公差 |
| 真円度測定機 | 0.01 μm | サブミクロン | 真円度、円筒度 |
接触式と非接触式
- 接触式は表面の色や光沢の影響を受けず、トレーサビリティも成熟しています。ただし 1 点ずつ触れる必要があるため複雑な輪郭は遅く、薄物や軟質品は測定力でたわみます。
- 画像式は一度に数百の寸法を取得でき、板物やプレス品に向きます。ただし高さ情報は取れず、エッジ判定は表面状態と照明に左右されます。
- レーザ/共焦点は深穴や高コントラスト面にも届きますが、急斜面や透明材では値が乱れます。
04温度:いちばん忘れられる変数
測定の国際的な基準温度は 20 °C です。鋼の線膨張係数は約 11.7 μm/(m·K)、アルミは約 23 μm/(m·K)。500 mm のアルミ部品が 20 °C から 28 °C になれば、長さは約 92 μm 変わります。多くのはめあい公差よりはるかに大きい量です。
| 材料 | 線膨張係数 (μm/m·K) | 500 mm 品が 8 °C 上昇したときの変化 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | 11.7 | 47 μm |
| ステンレス 304 | 17.3 | 69 μm |
| アルミ合金 | 23.1 | 92 μm |
| 黄銅 | 19.0 | 76 μm |
| 鋳鉄 | 10.5 | 42 μm |
05何で測るかをどう決めるか
- まず形体。2 次元の輪郭か、3 次元の形体か。データムの要る幾何公差はあるか。
- 次に公差幅。測定ばらつきを公差幅の 10 分の 1 未満に収めることを目標にします。
- そして生産量。抜取か全数か。1 日何個か。タクトはどれだけか。
- 最後にトレーサビリティ。客先は検査成績書を求めるか、校正証明書は要るか。
答えはたいてい自然に絞られます。3 次元・厳しい公差・抜取なら CMM、2 次元・大量・全数なら画像式、現場での素早い確認にはノギスとマイクロメータが今も確実に居場所を持っています。