加工方法読了時間 13 分
溶接記号の読み方と、ビードがきれいでも良い溶接とは限らない話
溶接品質の厄介なところは、いちばん効いているのが内側にあり、見えるのは外側だということです。
Wikimedia Commons・Gas Metal Arc Welding (Mig).jpg・CC BY-SA 4.001溶接記号の構成
ISO 2553 の溶接記号は 3 つの部分でできています。継手を指す引出線、基準線(実線と破線)、そして記号そのもの。位置そのものに意味があります。
- 記号が実線側:矢印の指す側を溶接する。
- 記号が破線側:矢印の反対側を溶接する。
- 両側にある:両面溶接。
- 尾部(フォーク):工法コード(135=MAG など)、規格番号、溶加材、品質等級。
| 記号 | 溶接の種類 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 三角 | すみ肉溶接 | T 継手、重ね継手、角継手 |
| V | V 形開先の突合せ | 中厚板の完全溶込み突合せ |
| Y | ルート面付きの V 形 | ルートの溶込みを管理したいとき |
| U | U 形開先 | 厚板、溶加材を減らす |
| 半円(プラグ) | プラグ溶接/スロット溶接 | 重ねた板の固定 |
| 折れ点の丸 | 全周溶接 | 一周閉じる |
| 旗 | 現場溶接 | 現地組立 |
寸法の読み方
すみ肉溶接は「a5」または「z7」と書きます。a はのど厚(有効厚さ)、z は脚長(母材に沿った長さ)で、関係はおおよそ a ≈ 0.7 z です。右側の「5×100 (50)」は、長さ 100 mm を 5 段、ピッチ 50 mm の断続溶接という意味です。
02よくある欠陥、その多くは見えない
| 欠陥 | 位置 | 主な原因 | 何が問題か |
|---|---|---|---|
| ブローホール | 内部・表面 | シールド不足、母材の水分や油分 | 有効断面を減らす |
| スラグ巻込み | 内部 | 層間のスラグ除去が不十分 | 応力集中 |
| 融合不良 | 内部 | 電流不足、角度不良 | きわめて危険。割れと同等 |
| 溶込み不足 | ルート | 開先不足、ルート間隔が狭い | 有効厚さが確保できない |
| アンダーカット | 表面 | 電流過大、運棒速度が速い | 疲労の起点になる |
| 割れ | 内部・表面 | 拘束応力、水素脆化、母材の硬化 | 最も重大 |
なかでも融合不良と溶込み不足が最も危険です。有効断面を直接減らし、荷重時には欠陥の先端に応力が集中する、挙動としてはあらかじめ入った割れに近いからです。重要な溶接部に UT(超音波)や RT(放射線)を行い、外観と PT(浸透探傷)だけで済ませないのはこのためです。
品質等級
ISO 5817 は鋼・ニッケル・チタンの融接継手を B・C・D の 3 等級に分け(B が最も厳しい)、欠陥ごとに許容寸法の上限を定めています。図面に「ISO 5817-B」とあれば、すべての欠陥が最も厳しい欄を満たす必要があり、検査方法もコストも変わります。
03変形:溶接後に気づいても手遅れ
溶接は局所的に加熱して冷やす工程で、収縮が不均一なら必ず変形します。薄板ではとくに顕著です。
- 角変形。突合せ溶接の両側が反り上がります。上側の溶融池が広く、収縮量が大きいためです。
- 長手方向の曲がり。長いビードが長さ方向に縮み、部材全体が弓なりになります。
- 収縮。全体寸法が縮みます。長いビードでは 1 m あたり 1 mm 以上縮むこともあります。
対策は対称溶接、後退法(バックステップ)、適切な治具拘束、そして設計段階で逆ひずみを見込むこと。いずれも図面審査と工程計画の段階で決めるべきものです。溶接後に矯正すればコストははるかに高く、残留応力も入ります。
04自動化はたいてい検査から始まる
自動溶接設備の価値は速さだけではなく、条件が安定し記録できることにあります。しかし条件を収束させるには、まず定量的な品質データが要ります。ビード寸法、余盛、アンダーカット深さ、溶込み。だから多くの工場の溶接自動化は、実際には検査のデジタル化から始まり、そのデータで溶接条件を詰めていきます。順番を逆にすると、たいてい失敗します。