品質管理読了時間 12 分
検査表は、どうやってできあがるのか
客先が求めているのは「測りました」ではありません。どの項目を測り、いくつだったか、何を根拠にしたか。この 3 つはすべて 1 枚の帳票で語られます。
01バルーン:図面を一覧に変える最初の一歩
バルーン付けとは、検査すべき規格の一つひとつに図面上で番号を振り、表でも同じ番号を使うことです。ただの採番に見えて、実際には図面を一覧に変える決定的な作業です。
番号を振る対象
- 個別指示か普通公差かを問わず、公差のあるすべての寸法。
- すべての公差記入枠とそのデータム。
- すべての表面粗さ記号。表題欄付近の全体既定も含む。
- 材種・熱処理・表面処理などの注記。
- ねじ仕様、バリ取り要求、表示と梱包の要求。
02初品検査の 3 つの帳票
航空宇宙の AS9102 は初品検査(FAI)の 3 つの帳票を定めており、この枠組みは多くの業界に借用されています。
| 帳票 | 内容 | 答える問い |
|---|---|---|
| Form 1 | 部品の基本情報、図番、版数、品番 | どの部品のどの版か |
| Form 2 | 材料・特殊工程・機能試験の証拠 | 材料と工程に裏付けがあるか |
| Form 3 | 規格ごとの測定結果と判定 | 各寸法は実際いくつだったか |
Form 3 の 1 行に必要なもの
| 項目 | 内容 | よくある不備 |
|---|---|---|
| バルーン番号 | 図面上の番号と対応 | 図面と番号が合っていない |
| 規格 | 図面の呼び寸法と上下の許容差 | 呼び寸法だけで公差がない |
| 測定値 | 実際に測った数値 | 数値ではなく「OK」と書く |
| 測定器 | 使用した測定器とその番号 | 未記入でトレースできない |
| 判定 | 合格/不合格 | 境界値の丸め規則が決まっていない |
| 備考 | 特採、手直し、測定条件 | 空欄 |
03抜取:何個測るか
全数検査はコストが高く、抜取なら「何個抜き、何個の不良まで合格とするか」に答える必要があります。ISO 2859-1(計数抜取)は合格品質限界 AQL と検査水準からサンプル数を決めます。
| ロット | 通常検査水準 II の文字 | サンプル数 | AQL 1.0 の合格判定個数 Ac/不合格判定個数 Re |
|---|---|---|---|
| 51 ~ 90 | E | 13 | 0 / 1 |
| 91 ~ 150 | F | 20 | 0 / 1 |
| 151 ~ 280 | G | 32 | 1 / 2 |
| 281 ~ 500 | H | 50 | 1 / 2 |
| 501 ~ 1200 | J | 80 | 2 / 3 |
注意点すべきは、抜取は出荷ロットに不良がないことを保証しない点です。保証しているのは「長期的に見て、不良率が AQL を超えるロットが合格する確率は低い」ということだけ。重要特性(CTQ)はふつう検査水準を上げるか全数にします。
04合格率から工程能力へ
合格・不合格だけを報告すると情報が失われます。実際の数値を記録して初めて工程能力指数を計算でき、工程がぎりぎり公差内なのかゆとりをもって中央なのかが見えます。
| 指標 | 考え方 | 見るところ |
|---|---|---|
| Cp | 公差幅 ÷ 6σ | ばらつきが十分に小さいか |
| Cpk | 平均の偏りも考慮する | どちらかに寄っていないか |
| Pp / Ppk | 長期の総ばらつきで計算 | ロット間変動を含む実力 |
業界でよく使われるしきい値は Cpk ≥ 1.33(約 63 ppm)で、自動車や医療の重要特性では 1.67 以上を求められます。ただしこれらの数字は工程がすでに統計的管理状態にあることが前提です。まだドリフトしている工程の Cpk を計算しても意味はありません。