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表面品質読了時間 12 分

防錆か、耐摩耗か、見栄えか:表面処理の選び方

表面処理は最後の工程でありながら、最初に忘れられがちです。厚みが付くことも、公差がずれることも。

01よく使う処理の比較

対処適する材料代表的な膜厚塩水噴霧寸法変化
アルマイト Type IIアルミ5 ~ 25 μm300 ~ 1000 hr膜厚のおよそ半分が外に育つ
硬質アルマイト Type IIIアルミ25 ~ 100 μm1000 hr 以上同上。影響は大きい
亜鉛めっき(三価クロム)5 ~ 15 μm96 ~ 240 hr膜厚の分だけ外に育つ
溶融亜鉛めっき45 ~ 85 μm数千 hr非常に厚い。ねじは広げる必要あり
無電解ニッケル鋼、アルミ、銅5 ~ 50 μm200 ~ 500 hr均一。深穴の内部にも付く
黒染め(四三酸化鉄)1 ~ 2 μm低い(油塗布が前提)ほぼ変化なし
りん酸塩・亜鉛フレーク被膜5 ~ 20 μm500 hr 以上外に育つ
不動態化(ステンレス)ステンレスもともとの耐食性を高めるなし
塩水噴霧時間は ISO 9227 の中性塩水噴霧によるもので、幅が広く、実際は適用規格によります。

02寸法は変わる。しかも向きが違う

  • 電気めっきと無電解めっきは外側に材料を足します。穴は小さく、軸は大きくなり、片側でおよそ膜厚の分だけ増えます。
  • アルマイトは少し違います。酸化層の半分が外へ育ち、半分が母材を食うので、片側の寸法増加は膜厚のおよそ半分です。
  • ねじへの影響がいちばん大きい。おねじの有効径は、ねじ山角の関係で膜厚のおよそ 4 倍増えます。だからめっき前のおねじは 6g、場合によっては 6e を指定して余裕をとります。

したがって図面には寸法が処理前か処理後かを明記しなければなりません。書かなければ、受入で双方の主張が食い違うのが常です。慣例では「図面寸法は表面処理を含む完成寸法」ですが、慣例は規格ではありません。

03水素脆性:高強度鋼の見えない殺し屋

めっき中に発生した水素が鋼へ侵入し、応力下で遅れ破壊を起こします。部品は組付けの数時間後から数日後に突然折れ、破面には塑性変形の跡がありません。

  • 危ないのは硬さ HRC 32 以上、引張強さ 1000 MPa 以上の鋼。高強度ボルト、ばね、止め輪が典型です。
  • 対策はめっき後 4 時間以内の脱水素ベーキング。一般に 190〜220 °C で 4〜24 時間、硬いほど長く(ISO 9588 による)。
  • より根本的には水素の出ない処理へ替えること。亜鉛フレーク被膜、機械めっき、物理蒸着など。

04図面での書き方

要素なぜ必要か
処理方法と規格アルマイト MIL-A-8625 Type II Class 2工程と等級を指定する
膜厚10 ~ 15 μm書かなければ処理業者が決める
黒/素地色染色の有無で工程が変わる
適用範囲全面/ねじ穴を除くマスキング範囲を明確に
寸法基準図面寸法は処理後受入での争いを防ぐ
付帯要求脱水素ベーキング、封孔、塩水噴霧 500 hr安全部品には必要
「アルマイト」とだけ書くのは、すべての判断を処理業者に委ねるのと同じです。