加工方法読了時間 12 分
道具はどう選び、いつ交換するか
道具は加工のなかで唯一「消耗するもの」であり、同時にもっとも「同じものを買っておけばいい」と扱われがちなものでもあります。
01材種:硬さと靭性の兼ね合い
| 材種 | 硬さ | 靭性 | 向く対象 |
|---|---|---|---|
| ハイス HSS | 低い | 高 | 低速、断続切削、成形道具 |
| 粉末ハイス PM-HSS | 中低 | 高 | ブローチ、ホブ |
| 超硬 | 高 | 中 | フライス・旋削の大半 |
| サーメット | 高 | 中低 | 鋼の仕上旋削。面がきれい |
| セラミック | 非常に高い | 低い | 鋳鉄や耐熱合金の高速旋削 |
| CBN | 極めて高い | 低い | HRC 45 以上の焼入れ鋼 |
| PCD | 極めて高い | 低い | アルミ、銅、複合材(鋼は不可) |
02被膜:機能を層で重ねる
| 被膜 | 色 | 耐熱 | 得意 |
|---|---|---|---|
| TiN | 金色 | 約 600 °C | 汎用、低コスト |
| TiCN | 青灰 | 約 400 °C | 耐摩耗。ステンレスと鋳鉄に向く |
| TiAlN / AlTiN | 紫黒 | 800 °C 以上 | 高速の乾式切削、硬材 |
| AlCrN | 灰青 | 1000 °C 以上 | 耐熱合金、高温で安定 |
| DLC | 黒 | 低い | アルミ・銅などの粘い材料。構成刃先を防ぐ |
| 無被膜(鏡面刃) | — | — | アルミ合金。刃が鋭く溶着しにくい |
03刃数:能率・排出・剛性
- 2 枚刃。切りくずの逃げがいちばん大きく、アルミ・深溝・全周接触の溝加工に向きます。
- 3 枚刃。アルミの高速加工でよく使う折衷案。
- 4 枚刃。鋼の汎用。剛性と能率のバランスがよい。
- 5 枚刃以上。半径方向切込みの小さい仕上げや高速加工向け。同じ回転数で送りは速くなりますが、切りくずの逃げが少なく深溝には使えません。
刃数が効くのは同じ回転数での送り速度です(Vf = fz × z × n)。刃数を倍にして fz が同じなら送りは倍になります。ただし切りくずが逃げ、機械が押せることが前提です。
04穴加工:3 つの方法の役割分担
| 方法 | 到達精度 | 深さ | 備考 |
|---|---|---|---|
| ドリル | IT11 ~ IT13 | 一般に 3〜5 D | 位置精度は低い。センタ穴か位置決め道具が要る |
| ガンドリル/深穴ドリル | IT9 ~ IT10 | 10 D 以上 | 内部給油。直進性がよい |
| リーマ | IT7 ~ IT8 | 浅い穴 | 寸法は直せるが位置は直せない |
| ボーリングバー | IT6 ~ IT7 | バーによる | 位置と真円度を修正できる。単刃で微調整可 |
| ヘリカル補間 | IT8 ~ IT9 | 道具長による | 1 本で複数の穴径に対応。少量多品種向き |
05いつ道具を交換するか
道具の摩耗にはいくつかの形があり、それぞれ別の問題を指しています。
| 摩耗の形 | 見た目 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 逃げ面摩耗 VB | 刃先の下に平らな面ができる | 正常摩耗 | VB 値で交換(一般に 0.2〜0.3 mm) |
| クレータ摩耗 | すくい面がえぐれる | 切りくずとの摩擦、拡散摩耗 | Vc を下げる、被膜を替える |
| チッピング | 刃先が欠ける | 衝撃、切りくず詰まり | fz を下げる、排出を改善、靭性の高い材種へ |
| 構成刃先 | 刃先に材料が溶着 | 速度が低すぎる、粘い材料 | Vc を上げる、DLC か鋭い刃を使う |
| サーマルクラック | 刃先に直交する亀裂 | 断続切削での加熱と冷却の繰返し | 乾式にするか、途切れなく安定して給液する |