図面管理読了時間 11 分
誰も気づかなかった 2 ミリ
製造業でいちばん高くつくミスは、たいてい「作り損なった」ではなく「旧図どおり正しく作った」です。
01版数はどこに書かれるか
図面の版数はふつう 3 か所に現れ、3 つとも一致していなければなりません。表題欄の版数欄、改訂履歴表(多くは図枠の右上か右側)、そしてファイル名です。どれか 1 つでも食い違えば、それは運用が壊れている合図です。
| 項目 | 内容 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 版数記号 | A、B、C または 01、02 | この版を識別する |
| 改訂日 | 発効日 | 仕掛品がどの版によるべきかを判断する |
| 変更内容 | 何を、どの区画で変えたか | 1 枚を読み直さなくて済む |
| 変更区域 | 図面の区分記号(B4 など) | 図面上の位置を指す |
| 承認者 | サイン | 責任の追跡 |
02新旧を比べる 4 つの方法
| 方法 | やり方 | 長所 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 目視で並べる | 2 枚を並べて一項目ずつ照合 | 道具が要らない | 遅く、見落としやすく、集中力頼み |
| 重ね合わせ | 半透明にして重ねる | 形状の変化は一目でわかる | 寸法や注記の変更は見えない |
| CAD 差分 | CAD 上で図形要素を比較 | 正確 | ネイティブファイルが要る。版の互換性問題 |
| 解析して比較 | 構造化データに解析してから一項目ずつ比較 | 寸法・公差・注記まで網羅 | 図面が正しく解析されることが前提 |
実務でいちばん見落とされる 3 種類の変更。1 つめは公差の厳格化(寸法は動かず公差だけ変わる)、2 つめは注記の変更(材種・熱処理・表面処理)、3 つめはデータムの変更(幾何公差の基準が A|B から A|C へ)。いずれも重ね合わせではまったく見えません。
03支給図の版数の落とし穴
- ファイル名は rev C なのに図枠は rev B。どちらが正か。
- 客先のメール本文に「更新版です」とだけあり、添付のファイル名は前とまったく同じ。
- 同じ日に 2 つの版が数分違いで届く。
- PDF がスキャンで、版数欄が手書きで上書きされている。
どれも仮の話ではありません。対策は図面を受け取ることを正式な工程として扱うことです。入ってくる図面はすべて図番・版数・入手元・受領時刻を登録し、前版との差分を取ってから現場へ発行する。この一手を欠けば、その先の管理はすべて砂上の楼閣になります。
04変更がコストに与える影響
改版のコストは図面を描き直すことだけではありません。寸法 1 つの変更が次々に波及します。
- 治具・検具の修正が要るか
- 道具経路(NC プログラム)の作り直しが要るか
- 仕掛品は特採・手直し・廃却のどれになるか
- 手配済みの下流部品に影響はあるか
- 検査表と成績書を出し直す必要があるか
- 客先で初品検査をやり直す必要があるか
AS9102 は明確です。はめあい・形状・機能に影響する変更には部分初品検査が必要と定めています。つまり規制のある業界では「小さな寸法を 1 つ変えただけ」が、文書一式のやり直しを意味しうるのです。