図面判読読了時間 11 分
M8×1.25-6H の 1 文字ずつが語っていること
M8 は誰でも分かります。ところが M8×1-6g と M8-6H の違い、そしてなぜ下穴が 6.9 ではなく 6.8 なのかは、全員が答えられるわけではありません。
01メートルねじ記号の構造
完全な ISO メートルねじの指示はこうなります:M8 × 1.25 − 6H − LH。
| 位置 | 内容 | 問うこと |
|---|---|---|
| M | ねじの種類 | M=ISO メートル三角ねじ |
| 8 | 呼び径 | おねじの外径、単位 mm |
| × 1.25 | ピッチ | 省略すれば並目 |
| − 6H | 公差等級と位置 | 数字=等級、文字=位置 |
| − LH | ねじれ方向 | 省略で右ねじ、LH で左ねじ |
公差等級と位置
| 記号 | 向く対象 | 問うこと |
|---|---|---|
| 6H | めねじ | 一般用途でいちばん多い |
| 6g | おねじ | いちばん多い。めっき代を見込める |
| 6h | おねじ | 基準寸法許容差ゼロ、やや厳しい |
| 4H5H / 4h | めねじ/おねじ | 精密はめあい |
| 7H / 8g | めねじ/おねじ | 緩め。溶融亜鉛めっき後のねじに適する |
数字が小さいほど公差は厳しくなります。めねじもおねじも有効径と外径(または内径)の 2 組の公差を持ち、5g6g と書けば有効径 5 級・外径 6 級を意味します。1 組だけ(6g)なら両方同じです。
02はめあい長さ:見過ごされる最後の文字
同じ公差等級でも、はめあい長さが違えば実際の公差値は変わります。ISO 965 は S(短い)・N(並)・L(長い)の 3 群に分け、公差等級のあとに 6H-L のように書きます。省略時は N です。
なぜ重要か。はめあいが長いほどピッチ誤差が積み上がるため、長いはめあいには広い有効径公差がないと入りません。深いタップ穴(径の 1.5 倍超)では、N の公差だと焼き付くことがあります。
03下穴径の求め方
近似式は下穴 ≈ 呼び径 − ピッチです。M8×1.25 なら 8 − 1.25 = 6.75 で、実務では 6.8 mm を使います。
| ねじ | ピッチ | 理論下穴 | 実際のドリル |
|---|---|---|---|
| M3 | 0.5 | 2.50 | 2.5 |
| M4 | 0.7 | 3.30 | 3.3 |
| M5 | 0.8 | 4.20 | 4.2 |
| M6 | 1.0 | 5.00 | 5.0 |
| M8 | 1.25 | 6.75 | 6.8 |
| M10 | 1.5 | 8.50 | 8.5 |
| M12 | 1.75 | 10.25 | 10.2 |
ねじ山率の兼ね合い
下穴を大きくすればねじ山率は下がり、タップは軽くなり折損の危険も減りますが、引張強さも落ちます。経験上、ねじ山率 75% でも引抜き強さは 100% に近く、タップトルクは半分程度で済みます。多くの工場がやや大きめの下穴を選ぶ理由です。
04図面の深さ指示
「M8↧16」と「M8↧16/Ø6.8↧20」は別の指示です。前者は有効ねじ深さだけを示し、下穴深さは製造側に委ねます。後者は下穴も指定しています。
- 有効ねじ深さは完全山の長さで、鋼なら径の 1.5〜2 倍、アルミなら 2〜2.5 倍が目安です。
- 下穴深さは不完全山と切りくずの逃げを見込み、有効ねじ深さより 3〜5 ピッチ深くします。
- 貫通は M8 THRU と書くか断面で示し、深さは不要です。