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歯車図面の隅にある諸元表の読み方
歯車図面に描かれた円は、その歯車の本当の形ではありません。相手と噛み合うかどうかを決めているのは、隅にある表のほうです。
Wikimedia Commons・One Knobbed Gear Shaft and Thirteen Spur Gears・Public domain01なぜ歯形を描かないのか
インボリュート歯形は数学的に定義された曲線です。描いても正確でなく意味もありません。歯はホブやピニオンカッタで「創成」されるもので、線をなぞって切るわけではないからです。だから製図規格は歯車を簡略図示で表すと定めます。歯先円は太実線、基準円は細一点鎖線、歯底円は細実線または省略。本当の仕様は諸元表に書きます。
02諸元表の中心となる項目
| パラメータ | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| モジュール | m | 基準円直径 ÷ 歯数。歯の大きさを決める |
| 歯数 | z | 1 回転あたりの歯の数 |
| 圧力角 | α | インボリュートの基準角。標準は 20° |
| 歯形 | — | 並歯か低歯か。歯末のたけ係数を決める |
| 転位係数 | x | 基準円に対する道具の移動量 |
| 基準円直径 | d | d = m × z |
| 歯先円直径 | da | 標準平歯車で da = m(z + 2) |
| 歯底円直径 | df | 標準平歯車で df = m(z − 2.5) |
| またぎ歯厚/オーバーピン | W / M | 実際に受入判定する寸法 |
| 精度等級 | — | ISO 1328 の 6 級、7 級など |
03中心距離と変速比
標準歯車 2 個の中心距離は a = m(z₁ + z₂) / 2、変速比は i = z₂ / z₁ です。式は単純ですが、実務では中心距離が機構の都合で固定され、m と z も特定の値でなければならないことが多い。そこで登場するのが転位です。
転位歯車
転位とは、道具を基準円に対して外側または内側へずらし、歯厚と歯形を変えることです。用途は 3 つ。標準でない中心距離に合わせること、少歯数での切下げを避けること(圧力角 20° では z < 17 で切下げが起きる)、そして 2 つの歯車の歯元曲げ強さのバランスを取ること。図面に転位係数 x があれば、すべての直径計算を補正する必要があります。
04歯厚はどう測るか
歯厚はノギスで直接は測れません。基準円上には掴めるものがないからです。実務では 3 つの代替法があります。
| 方法 | 何を測るか | 向く対象 | 限界 |
|---|---|---|---|
| またぎ歯厚 W | k 枚の歯をまたいだ 2 平面の距離 | 平歯車、はすば歯車 | 歯幅と歯数が足りていること |
| オーバーピン M | 2 本のピンを入れた外側距離 | 少歯数、内歯車 | 対応する径のピンが要る |
| 歯厚ノギス | 指定した歯たけ位置の弦歯厚 | 現場での素早い確認 | 歯先円の誤差に影響される |
05精度等級と歯面の誤差
ISO 1328 は歯車精度を 0 から 12 級に分け(数字が小さいほど高精度)、いくつかの独立した誤差で定義します。
- 歯形誤差 fα。実際の歯面が理論インボリュートからどれだけ外れているか。
- 歯すじ誤差 fβ。歯幅方向の傾きやクラウニングのずれ。
- 単一ピッチ誤差 fp と累積ピッチ誤差 Fp:歯が正しい位置にあるかどうか。
- 半径方向の振れ Fr。歯車全体の軸心に対する偏心。
一般的な産業用伝動では 7〜8 級、工作機械の主軸や減速機では 5〜6 級、測定用のマスタギヤだけが 3 級以下になります。等級を 1 つ上げるごとに、コストはふつう 3 割以上増えます。
熱処理による変形
浸炭焼入れのあと歯面は変形するため、高精度歯車の工順はふつう「ホブ切り → 熱処理 → 歯研」です。図面に 6 級精度と表面硬さ HRC 58 以上が同時に書かれていれば、それは歯研が必要という指定にほかならず、コスト構造がまったく変わります。見積でいちばん見落とされる判断です。