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機械要素読了時間 13 分

歯車図面の隅にある諸元表の読み方

歯車図面に描かれた円は、その歯車の本当の形ではありません。相手と噛み合うかどうかを決めているのは、隅にある表のほうです。

Wikimedia Commons・One Knobbed Gear Shaft and Thirteen Spur Gears・Public domain

01なぜ歯形を描かないのか

インボリュート歯形は数学的に定義された曲線です。描いても正確でなく意味もありません。歯はホブやピニオンカッタで「創成」されるもので、線をなぞって切るわけではないからです。だから製図規格は歯車を簡略図示で表すと定めます。歯先円は太実線、基準円は細一点鎖線、歯底円は細実線または省略。本当の仕様は諸元表に書きます。

02諸元表の中心となる項目

パラメータ記号意味
モジュールm基準円直径 ÷ 歯数。歯の大きさを決める
歯数z1 回転あたりの歯の数
圧力角αインボリュートの基準角。標準は 20°
歯形並歯か低歯か。歯末のたけ係数を決める
転位係数x基準円に対する道具の移動量
基準円直径dd = m × z
歯先円直径da標準平歯車で da = m(z + 2)
歯底円直径df標準平歯車で df = m(z − 2.5)
またぎ歯厚/オーバーピンW / M実際に受入判定する寸法
精度等級ISO 1328 の 6 級、7 級など
平歯車の諸元表の代表的な項目。はすば歯車ではねじれ角とねじれ方向が加わります。

03中心距離と変速比

標準歯車 2 個の中心距離は a = m(z₁ + z₂) / 2、変速比は i = z₂ / z₁ です。式は単純ですが、実務では中心距離が機構の都合で固定され、m と z も特定の値でなければならないことが多い。そこで登場するのが転位です。

転位歯車

転位とは、道具を基準円に対して外側または内側へずらし、歯厚と歯形を変えることです。用途は 3 つ。標準でない中心距離に合わせること、少歯数での切下げを避けること(圧力角 20° では z < 17 で切下げが起きる)、そして 2 つの歯車の歯元曲げ強さのバランスを取ること。図面に転位係数 x があれば、すべての直径計算を補正する必要があります。

04歯厚はどう測るか

歯厚はノギスで直接は測れません。基準円上には掴めるものがないからです。実務では 3 つの代替法があります。

方法何を測るか向く対象限界
またぎ歯厚 Wk 枚の歯をまたいだ 2 平面の距離平歯車、はすば歯車歯幅と歯数が足りていること
オーバーピン M2 本のピンを入れた外側距離少歯数、内歯車対応する径のピンが要る
歯厚ノギス指定した歯たけ位置の弦歯厚現場での素早い確認歯先円の誤差に影響される
またぎ歯厚がいちばんよく使われます。測定器が安く、歯先円の精度に左右されないからです。

05精度等級と歯面の誤差

ISO 1328 は歯車精度を 0 から 12 級に分け(数字が小さいほど高精度)、いくつかの独立した誤差で定義します。

  • 歯形誤差 fα。実際の歯面が理論インボリュートからどれだけ外れているか。
  • 歯すじ誤差 fβ。歯幅方向の傾きやクラウニングのずれ。
  • 単一ピッチ誤差 fp累積ピッチ誤差 Fp:歯が正しい位置にあるかどうか。
  • 半径方向の振れ Fr。歯車全体の軸心に対する偏心。

一般的な産業用伝動では 7〜8 級、工作機械の主軸や減速機では 5〜6 級、測定用のマスタギヤだけが 3 級以下になります。等級を 1 つ上げるごとに、コストはふつう 3 割以上増えます。

熱処理による変形

浸炭焼入れのあと歯面は変形するため、高精度歯車の工順はふつう「ホブ切り → 熱処理 → 歯研」です。図面に 6 級精度と表面硬さ HRC 58 以上が同時に書かれていれば、それは歯研が必要という指定にほかならず、コスト構造がまったく変わります。見積でいちばん見落とされる判断です。