加工方法読了時間 12 分
板金の展開長は、なぜ辺を足すだけでは出ないのか
板金部品に起きうる誤差のなかで、いちばん高くつくのはブランクを切り間違えることです。その時点では、あとのどの工程でも救えません。
Wikimedia Commons・High-tonnage press brake・CC BY-SA 4.001展開長が各辺の合計にならない理由
曲げると外側は伸び、内側は縮み、その間に長さの変わらない層があります。中立軸です。展開長はこの層の展開長さであり、中立軸は板厚のちょうど真ん中ではなく、内側寄りにあります。
| 用語 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 板厚 | T | 材料の厚さ |
| 内 R | R | 曲げ内側の隅の半径 |
| 曲げ角度 | A | 何度曲げたか(挟角ではない) |
| K ファクタ | K | 中立軸位置 ÷ 板厚。0〜0.5 の範囲 |
| 曲げ代 | BA | 曲げ部における中立軸の弧長 |
| 曲げ引き | BD | 外側寸法を足したあとに引く量 |
2 つの計算方法
- 曲げ代法。展開長 = 2 つの平坦部の長さ + BA。ここで BA = A × (π/180) × (R + K×T)。
- 曲げ引き法。展開長 = 2 つの外側寸法 − BD。外側寸法は直接測れるので、現場では引き法のほうがよく使われます。
02内 R は好きな値を書けるわけではない
エアベンドでは内 R はパンチではなくダイの開き幅で決まります。自然な半径はおよそ開き幅の 0.16 倍です。図面に非常に小さい R を書いても、対応する金型がなければ実際には作れません。
| 材料 | 最小内 R(板厚比) | 問うこと |
|---|---|---|
| 軟アルミ 1050 / 3003 | 0.5 T ~ 1 T | 延性が高い |
| アルミ 5052 | 1 T ~ 2 T | 板金でよく使うアルミ |
| アルミ 6061-T6 | 2 T ~ 4 T | 硬く、割れやすい |
| 軟鋼 SPCC | 0.5 T ~ 1 T | いちばん曲げやすい |
| ステンレス SUS304 | 1 T ~ 2 T | スプリングバックが大きい |
| 高張力鋼 | 2 T 以上 | 材種記号による |
スプリングバック
曲げて力を抜くと、材料は角度がいくらか戻ります。これがスプリングバックです。強度が高いほど、板が薄いほど、曲げ R が大きいほど大きくなります。SUS304 を 90° に曲げるには 92〜94° まで過曲げしないと 90° に収まらないこともあります。ボトミングやコイニングで大幅に抑えられますが、必要な圧力ははるかに大きくなります。
03設計ルール:この距離は小さくできない
| 項目 | 推奨最小値 | 守らないと |
|---|---|---|
| 穴から曲げ線まで | 2.5 T + R | 穴が楕円に引っ張られる |
| 曲げフランジの最短長さ | 4 T(R 込み) | 掴めず、曲げられない |
| 曲げと曲げの間 | 6 T | 金型が干渉する |
| 切欠きの幅 | 1.5 T | 裂ける |
| スリットの深さ | 5 T | 縁が変形する |
よくある問題があと 2 つ。曲げ端部の逃がし切欠きを入れないと、曲げ線の終端で材料が裂けます。曲げ順序を考えないと、あとの曲げで金型が成形済みの部分に当たって曲げられなくなります。どちらも図面審査の段階で気づけます。
04板金図面に必要な情報
- 板厚と材種記号(SPCC-SD のような表面状態を含む)。
- 展開図または展開長、客先から支給がなければ自社で計算し、K ファクタは自分の機械に合わせる。
- 曲げ線と曲げ方向(上曲げ/下曲げ)。角度と内 R も併記するのが望ましい。
- 穴位置の基準、曲げ後のどの面から測るか。
- バリ取りと表面処理の要求、および寸法が処理前か処理後か。